介護の現場を長年見てきた経験を生かして
介護事業所の労務管理は複雑です。
処遇改善加算や労務の問題の悩みをサポートします。
急速な高齢社会が進む中、介護事業所の役割はとても重要なものとなっています。
まず、介護事業所がサービスの質を向上し、利用者に満足度を高めてもらうには、介護職員の力なくしては成り立ちません。
しかし、仕事がきつい、給料が安いなどと言われ不人気職種の1つとなってしまいました。
近年では、介護職員養成の福祉系の専門学校でも入学希望者が頭打ち傾向にあるようです。
そのため、せっかく入社した従業員には、安心して働いてもらう必要があります。
そして、頻繁に改正される「処遇改善加算」を理解して、「加算Ⅰ」を取得するなどして、待遇をアップさせていくことが大切です。
また、ストレスを伴う作業が多いのでメンタルヘルス対策や身体負荷も大きく、業務の効率化も重要です。
したがって、介護事業所においては、労働時間や休日といった労働環境の見直しだけでなく、安全・衛生、健康管理にも配慮した職場環境作りを目指していきましょう。
介護施設の労務管理5つのポイント
現状の介護施設・介護職員の労務管理のポイントをまとめてみました。
1 | 多様な雇用形態 | 常勤職員、パートタイマー、契約職員、派遣職員といった多様な雇用形態に応じた就業規則の作成が必要になります。 |
---|---|---|
2 | 人材確保 | 慢性的な人材不足状態のため、職員の定着率向上がカギになってきます。 |
3 | 労働時間管理 | 大半が24時間365日体制です。労働時間管理の体制づくりが介護施設における労務管理の基本です。 |
4 | 女性職員への配慮 | 多様な働き方を求め、女性職員が多いのが特徴です。子どもの出産や育児との両立が必要です。 |
5 | パートタイマーの管理 | 24時間365日体制ですので、パートタイマーの採用が不可欠。そのため、労働時間、賃金、各種保険の管理を適正に行う必要があります。 |
労働時間管理について
介護事業所における労務管理の基本は、労働時間管理と言ってもおおげさではありません。
1年を通じて24時間営業です。適正な時間管理が求められます。
介護事業所でも、1日8時間、週40時間の実現が求めれていますが、介護職と事務職ではその運用方法に違いがあります。
病院やコンビニエンスストアと同様に変形労働時間制の導入、シフト表による時間管理が必要です。
職種 | 労働基準法で定める時間 | 勤務体制 |
---|---|---|
事務職 | 原則1日8時間、1週40時間 | 1年単位の変形労働時間制 週5日勤務(週休2日制) 週6日勤務(隔週2日制) |
介護職 | 原則1日8時間、1週40時間 1ヶ月単位の変形労働時間制 |
シフト勤務、早番、遅番、日勤、夜勤 |
介護事業所は変形労働時間制の導入が最適です!
介護事業所は、一律な労働時間管理はそぐわないです。職種に併せた適切な労働時間管理を目指していきます。
事務職
介護職と違い特殊な時間管理は必要ありません。いわゆる一般の事業所と同じく、1日8時間、1週40時間制の対応でも構いません。
しかし、完全週休2日制の導入が、難しければ1年単位の変形労働時間制の導入をオススメします。
1年単位の変形労働時間制とは年平均で週40時間制を達成すればよいという制度です。
例えば、労働時間が1日8時間の場合、休日を105日に設定すれば、年平均で40時間制を達成できます。
<例>
年間の労働時間 8時間×260労働日=2,080時間
2,080時間×7日÷365日=39,8時間(40時間以内達成)
介護職
24時間体制の介護職の場合は、夜勤もありますので1日の勤務時間が8時間を超えることは、少なくありません。
この場合、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する事で法定労働時間である8時間を超えて勤務させることができます。
1ヶ月単位の変形労働時間制とは、いわゆるシフト勤務に適しています。月平均で週40時間制を達成できればよいという制度です。
夜間勤務を16時~翌朝10時まで勤務(途中休憩2時間、実働16時間)というように2勤務分を連続させたシフトを組むことが可能になります。
<例>1ヶ月が31日の月の場合 上限労働時間
40時間×1ヶ月の歴日数(31)÷7日=177.1時間
(30日の月→171時間 29日の月→165時間 28日の月→160時間)
介護職員処遇改善加算ならびに特定処遇改善加算
介護職員処遇改善加算とは
介護職員改善加算とは、介護の離職率が高いという問題点に、仕事のわりには賃金が低いなどの理由があるため、介護の現場に携わる職員に対して給与面で報いるために創設された加算金をいいます。
介護職員処遇改善加算を取得する事業所は、介護職員研修の確保や雇用管理の改善などとともに、加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。
介護職員処遇改善加算の区分について
従前の介護職員改善加算区分は、ⅠからⅣ(4)まで4区分でしたが、平成29年度から区分は1つ増えて5区分になりました。
- 加算Ⅰ:介護職員1人当たり月額37,000円相当の加算
- 加算Ⅱ:介護職員1人当たり月額27,000円相当の加算
- 加算Ⅲ:介護職員1人当たり月額15,000円相当の加算
※加算Ⅳと加算Ⅴは、2018年の介護報酬改正で廃止されました。
処遇改善加算の各区分を取得するためには「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」の算定要件を満たす必要があります。
キャリアパス要件とは
キャリアパス要件Ⅰ
(1)介護職員の任用の際における職位(役職)、職責または職務内容に応じた任用等の要件を定めるこ
と。
(2)(1)に掲げる職位(役職)、職責または職務内容に応じた任用等の要件を定めていること。
(3)(1)および(2)の内容について職業規則などのもので書面で明確にし、周知していること。
キャリアパス要件Ⅱ
(1)次のア.またはイ.の条件を満たした計画を作成していること。
ア.資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供または技術指導等を実施(OJT、OFF-JT)する
とともに介護職員の能力評価を行うこと。
イ.資格取得のための支援(金銭、休暇の取得など)を行うこと。
(2)上記の内容をすべての介護職員に周知していること。
キャリアパス要件Ⅲ
(1)経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
を設けること。具体的には、次のいずれか昇給の仕組みを導入していること。
・経験年数や勤続年数に応じて昇給する仕組み
・資格取得(または保有)により昇給する仕組み
・人事評価や試験結果により昇給する仕組み
(2)上記の内容をすべての介護職員に周知していること。
職場環境等要件
・賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施すること
・介護職員処遇改善加算を取得するにあたっては、賃金改善等の処遇改善の内容等について、雇用する全ての介護職員へ周知すること
資質の向上
- 働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援(研修受講時の他の介護職員の負担を軽減するための代替職員確保を含む)研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
- 小規模事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
- キャリアパス要件に該当する事項(キャリアパス要件を満たしていない介護事業者に限る)
- その他
職場環境・処遇の改善
- 新人介護職員の早期離職防止のためのエルダー・メンター(新人指導担当者)制度等導入
- 雇用管理改善のための管理者の労働・安全衛生法規、休暇・休職制度に係る研修受講等による雇用管理改善対策の充実
- ICT活用(ケア内容や申し送り事項の共有(事業所内に加えタブレット端末を活用し訪問先でアクセスを可能にすること等を含む)による介護職員の事務負担軽減、個々の利用者へのサービス履歴・訪問介護員の出勤情報管理によるサービス提供責任者のシフト管理に係る事務負担軽減、利用者情報蓄積による利用者個々の特性に応じたサービス提供等)による業務省力化
- 介護職員の腰痛対策を含む負担軽減のための介護ロボットやリフト等の介護機器等導入
- 子育てとの両立を目指す者のための育児休業制度等の充実、事業所内保育施設の整備・ ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善・ 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成による責任の所在の明確化
- 健康診断・こころの健康等の健康管理面の強化、職員休憩室・分煙スペース等の整備
- その他
その他
- 介護サービス情報公表制度の活用による経営・人材育成理念の見える化
- 中途採用者(他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等)に特化した人事制度の確立(勤務シフトの配慮、短時間正規職員制度の導入等)
障害を有する者でも働きやすい職場環境構築や勤務シフト配慮 - 地域の児童・生徒や住民との交流による地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上
- 非正規職員から正規職員への転換
- 職員の増員による業務負担の軽減
- その他
算定要件
申請できる加算は、算定要件をどの程度満たしているかによって異なります。区分別の算定要件は以下の通りです。
※加算ⅣとⅤは、2018年の介護報酬改正で廃止されました。
処遇改善加算Ⅰ
キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの全て、及び職場環境等要件を満たしていること。
処遇改善加算Ⅱ
キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ、及び職場環境等要件を満たしていること。
処遇改善加算Ⅲ
キャリアパス要件ⅠまたはⅡ、及び職場環境等要件を満たしていること。
介護予防を含む、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅介護支援、介護予防支援については加算算定対象外です。
報酬のご案内
介護職員処遇改善加算届出手続 | 1件につき 50,000円 |
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介護職員処遇改善加算実績報告届出手続 | 1件につき 50,000円 |
※届出手続にご費用です。就業規則及び賃金規程の作成は含みません。
※就業規則及び賃金規程を作成する場合、別途ご費用を頂戴いたします。
人事評価制度や賃金規程を見直ししませんか
介護職員処遇改善加算Ⅰを取得するには、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設ける必要があり、人事評価制度や賃金規程の見直しが必須です。
キャリアパス導入の取組
労務管理と人材育成をおこないながら、人材の定着率を上げることの効果を高めるために。
・介護処遇改善加算Ⅰ・Ⅲの導入に当たるキャリアパス(職務等級、職務等級任用、賃金体系)
・介護処遇改善加算Ⅱの導入に当たる研修の組み立て、評価の基準等
2019年10月から特定処遇改善加算がスタートしています。
特定処遇改善加算は、処遇改善加算の上乗せとして新たに加算が取得できます。